白虎湯(びゃっことう)は、『傷寒論』に記載されている漢方の代表的な清熱薬で、強い「熱」を冷ますために用いられます。特に、体の熱がこもっている「実熱」症状や炎症、喉の渇きなどに効果があります。高熱が出ているときや、熱がこもっているときの体を冷やし、炎症を鎮める作用があります。
一、処方の出典
- 出典:『傷寒論』(中国・漢代)
- 地位:清熱薬の基本処方として、高熱や強い口渇、煩躁感(落ち着きのなさ)などの「実熱」による症状に適用されます。
二、構成と分量
白虎湯は以下の四つの生薬で構成されています。
- 石膏(せっこう)(30グラム)
- 効能:強力な清熱作用、体の熱を冷ます。
- 役割:体にこもった高熱を冷やし、炎症を抑えます。特に口の渇きや喉の痛みに効果があります。
- 知母(ちも)(9グラム)
- 効能:清熱作用、滋陰(体液を補充する)作用。
- 役割:石膏とともに体の熱を冷まし、乾燥によるのどの渇きを和らげます。炎症を抑え、体液を補う働きがあります。
- 粳米(こうべい)(9グラム)
- 効能:胃腸を保護し、体力を補助。
- 役割:胃を保護し、他の薬の冷却作用で胃が冷えるのを防ぎます。体力を補い、消化機能をサポートします。
- 甘草(かんぞう)(3グラム)
- 効能:緩和作用、炎症の抑制、他の薬剤の調和。
- 役割:白虎湯全体の調和をとり、体に優しく作用するようにします。副作用を抑え、消化を助けます。
三、主要な効能
- 清熱瀉火:体の強い熱を取り、炎症を抑える。
- 生津止渇:喉の渇きを抑え、乾燥感を和らげます。
- 胃腸の保護:強い熱を冷やす作用を持ちながら、胃腸の負担を軽減する働きもあります。
四、主な適応症
白虎湯は以下の症状に効果があります:
- 高熱と口渇:高熱が続き、口の渇きや発汗が多い場合。
- 実熱症状:炎症が激しく、落ち着きのなさや不安感があるとき。
- 夏の暑気あたり:夏の暑さや熱によって、体内に熱がこもり、喉が渇く、頭痛、疲労感があるとき。
- 発熱性の感染症:炎症が強く、高熱とともに乾燥感がある感染症。
五、服用方法
- 煎じ方:上記の生薬を水に浸して煎じ、1日1~2回に分けて服用します。特に高熱が出ているときに服用するのが効果的です。
- 市販薬:白虎湯は日本や中国でも市販されていますが、他の漢方薬に比べて比較的冷却作用が強いため、使用には医師の指導が望まれます。
六、注意事項
- 体力が低下している人には不向き:白虎湯は強力な清熱作用を持つため、体力が低下している人や、冷え性の人には適していません。
- 長期間の服用は避ける:必要な期間のみ服用し、長期間の服用は避けます。
- 妊婦や胃腸が弱い方は注意:妊娠中や胃腸が弱い方は、使用前に医師に相談してください。
七、現代の応用と使用法
白虎湯は、強い発熱や炎症に伴う症状に応用されており、特にインフルエンザやウイルス感染症などの発熱があるときに使用されることがあります。また、夏場の熱中症予防や、暑さによる食欲不振や疲労感の緩和に利用されることもあります。